少し前に、佐藤康彦『イスラエルxウクライナ紀行』を読みました。
最近、ガリツィアやオデッサのユダヤ人に興味があるので、読んでみました。
著者の佐藤康彦氏は、ドイツ・オーストリア文学研究者として有名みたいですが、個人的にはヘルツル『ユダヤ人国家』の訳者として存じております。
この『イスラエルxウクライナ紀行』はその名の通りイスラエル、ウクライナへ調査のために訪れた際の記録(1993年夏)をまとめたものです。
イスラエルは主としてエルサレムの中央シオニスト文書館での資料調査を中心に、ウクライナではオデッサからキシニョフを経てチェルノヴィツ、ルヴォフという行程の旅が綴られています。
個人的にこの本を読んでみたいと思った理由の一つに、「ハイファ=オデッサ間を船で行く」というものがあります。飛行機なんかが登場する前は、当たり前ですが海上交通が長距離移動の花形でした。イスラエル、パレスチナを訪れる際もヤッフォやハイファの港から上陸するのが普通。東欧のユダヤ人たちもオデッサから黒海、ボスポラス海峡を抜けて地中海に入り、パレスチナの地を目指したことでしょう。
現代でその航路は非常に「渋い」ので余裕があれば試したいなと思っています。少し検索した限りでは旅客用の航路は現在も存在するみたいですが、具体的なスケジュールや料金を調べようと思ったらロシア語のサイト(分からない)に飛ばされてよく分かりませんでした。佐藤氏の本で書かれている値段は、「三泊四日、ショスタコーヴィチ号の二等寝台、食費を含めて約3万5千円」(片道)と書かれているので、当時でその値段なら今はもっと高いんだろうなと思います。2011年9月の時点で、飛行機ならテルアビブからキエフまで往復200ユーロ程であったので、勇気が入りますね。
イスラエルはともかく、佐藤氏が訪れたウクライナ、東ガリツィアのあたりは、正直全然知識がないのですが、アシュケナズィー(東欧ユダヤ人)にとって一つの中心ですので、もっと知りたいと思っております。
そういえば佐藤氏も訳しているヨーゼフ・ロートの故地、ルヴォフ(レンベルク)はポーランド領内(西ガリツィア)から目と鼻の先で、去年東欧を少し旅行した時に行きたかった場所の一つです。佐藤氏はそれを目当てにルヴォフを訪れておりましたが、渋い。
『果てしなき逃走』は読んだことがあります。
『イスラエルxウクライナ紀行』で少し気になった箇所を。
「(引用者注:キシニョフのシナゴーグを訪れた際に)…ユダヤ教における男女の区別は厳しく、このアメリカ式の会堂でさえ、今なおその区別が守られているようだ。しかし将来はきっと、この二階席は別の目的のために使うようになるだろう、例えばキリスト教会における合唱団のような席として。」(181項)
「(引用者注:ルヴォフを訪れた際)二万人近いというユダヤ系の人びとが、あまり祖先の宗教に固執せず、彼らだけの共同体を作らずに生活して行けるならば、そして、ウクライナの人びとが少数派の相手に対してこんな明るい好奇心を抱き、同僚としての親愛感を示すことができるならば、異質な人間にたいする排斥と差別はやがて消滅するにちがいない。シナゴーグがないことは、必ずしも悲しむに当たらないのだ。」(233項)
このあたり佐藤氏の思想が如実に現れているように思いますが、賛成しません。
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最近、ガリツィアやオデッサのユダヤ人に興味があるので、読んでみました。
著者の佐藤康彦氏は、ドイツ・オーストリア文学研究者として有名みたいですが、個人的にはヘルツル『ユダヤ人国家』の訳者として存じております。
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この『イスラエルxウクライナ紀行』はその名の通りイスラエル、ウクライナへ調査のために訪れた際の記録(1993年夏)をまとめたものです。
イスラエルは主としてエルサレムの中央シオニスト文書館での資料調査を中心に、ウクライナではオデッサからキシニョフを経てチェルノヴィツ、ルヴォフという行程の旅が綴られています。
個人的にこの本を読んでみたいと思った理由の一つに、「ハイファ=オデッサ間を船で行く」というものがあります。飛行機なんかが登場する前は、当たり前ですが海上交通が長距離移動の花形でした。イスラエル、パレスチナを訪れる際もヤッフォやハイファの港から上陸するのが普通。東欧のユダヤ人たちもオデッサから黒海、ボスポラス海峡を抜けて地中海に入り、パレスチナの地を目指したことでしょう。
現代でその航路は非常に「渋い」ので余裕があれば試したいなと思っています。少し検索した限りでは旅客用の航路は現在も存在するみたいですが、具体的なスケジュールや料金を調べようと思ったらロシア語のサイト(分からない)に飛ばされてよく分かりませんでした。佐藤氏の本で書かれている値段は、「三泊四日、ショスタコーヴィチ号の二等寝台、食費を含めて約3万5千円」(片道)と書かれているので、当時でその値段なら今はもっと高いんだろうなと思います。2011年9月の時点で、飛行機ならテルアビブからキエフまで往復200ユーロ程であったので、勇気が入りますね。
イスラエルはともかく、佐藤氏が訪れたウクライナ、東ガリツィアのあたりは、正直全然知識がないのですが、アシュケナズィー(東欧ユダヤ人)にとって一つの中心ですので、もっと知りたいと思っております。
そういえば佐藤氏も訳しているヨーゼフ・ロートの故地、ルヴォフ(レンベルク)はポーランド領内(西ガリツィア)から目と鼻の先で、去年東欧を少し旅行した時に行きたかった場所の一つです。佐藤氏はそれを目当てにルヴォフを訪れておりましたが、渋い。
『果てしなき逃走』は読んだことがあります。
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『イスラエルxウクライナ紀行』で少し気になった箇所を。
「(引用者注:キシニョフのシナゴーグを訪れた際に)…ユダヤ教における男女の区別は厳しく、このアメリカ式の会堂でさえ、今なおその区別が守られているようだ。しかし将来はきっと、この二階席は別の目的のために使うようになるだろう、例えばキリスト教会における合唱団のような席として。」(181項)
「(引用者注:ルヴォフを訪れた際)二万人近いというユダヤ系の人びとが、あまり祖先の宗教に固執せず、彼らだけの共同体を作らずに生活して行けるならば、そして、ウクライナの人びとが少数派の相手に対してこんな明るい好奇心を抱き、同僚としての親愛感を示すことができるならば、異質な人間にたいする排斥と差別はやがて消滅するにちがいない。シナゴーグがないことは、必ずしも悲しむに当たらないのだ。」(233項)
このあたり佐藤氏の思想が如実に現れているように思いますが、賛成しません。
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