2011年10月19日水曜日

イスラエル考古学の魅力

amazonが登場して、カードを持つようになり、インターネットで本が注文できるようになってからは本屋に行く必要がなくなった、という人もいますが、それは違うと思います。
当たり前のことですが、amazonで買える商品はあくまでも「自分が存在を知ってる(検索できる)書物」及び「その周辺(おすすめ商品等)」のみに限られます。そもそも自分が知らない商品は検索できませんし、その商品から大きく離れたところに布置している商品と出会う確率は限りなく少ない。そもそも「売れない本」や「洋書」は普通おすすめされません。
そのような未知の本と出会う場はやはり本屋や古本屋でしょう。

というわけで、自分の「苦手分野」の一つ、聖書考古学、レバント考古学の本を本屋で見つけ、読みやすそうだったので帰ってからamazonで注文しました。今は新年休みなので、日本語の本をゴロゴロ寝転がって読むのが心地良いです。

イスラエル考古学の魅力―サブラと遺跡と湖とイスラエル考古学の魅力―サブラと遺跡と湖と
牧野 久実

ミルトス 2007-05
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思えばミルトス出版社にはずいぶんお世話になってるものです。
著者の牧野久実さんは慶応大学とテルアビブ大学で考古学を学び、滋賀県立琵琶湖博物館に長らく携わった方とのこと。
本書は「月刊みるとす」に連載していたエッセイ集をまとめたもので、一章あたり5,6ページほどでまとまってるので、非常に読みやすいです。パレスチナ考古学の発達、それが日本考古学の基礎となっていること、ガリラヤ湖と琵琶湖の共通性、イスラエルの諸大学の考古学事情、テルアビブ大での授業の様子等々が語られており、一気に読んでしまいました。僕の大好きな、「基本的・プライベートすぎて概説書には書けない」(というか書かない)ようなことが語られています。内部にいれば当たり前のことなんでしょうけど、「この大学はこの分野が強い」というのは、私のような部外者には知れ得ることではありませんし、授業の様子(厳しさ)なんかは出ないと分かりませんし、色んな人に書いてもらいたいと思っています。

考古学が発達した19世紀以来、エジプトやメソポタミアでは華麗な出土品・遺跡が登場するのに対し、パレスチナでは「地味」な土器の類ばかり出たが、それが理由で土器編年・層位の方法論が発達し、それが日本にもたらされ、日本考古学の基礎となった、というのはハッとしました。1925年、原田淑人とともに東亜考古学会を設立した浜田耕作が、パレスチナ考古学の創始者フリンダース・ペリーに考古学の方法論と厳密な技術を学んだのが淵源であり、それが梅原末治や小林行雄に受け継がれたとのこと。(220項)
イスラエルなんかと関わる分野にいると、よく夏の発掘の話を耳にし、参加を勧められますが、イスラエルと日本の考古学分野での関係はそんなとこまで遡るんだなと少し驚きました。
また、僕の大好きな大阪の弥生博物館の金関恕先生も長年(30年)に渡って、発掘隊に関わられておられたということにも驚きました。イスラエルでの経験があの池上曽根遺跡の発掘に役立ったとのこと。

話を聞いてるとイスラエルでの夏の発掘は大変そうですが、一度は参加してみたいですね。

なお、イスラエルの考古学事情は、著者によると以下の通りです。(22項)
テルアビブ大はヘブライ大からアハロニらによって新たに設立、ユダヤ教の知識に裏打ちされたヘブライ大の考古学を一歩進め、幅広い視野を目指した。特に今日では歴史的側面だけではなく、関連分野の植物学・動物学・環境学というような分野の専門家や研究環境を用意。
砂漠の考古学に強いベングリオン大学、水中考古学に強いハイファ大学、そもそもは宗教色の濃い大学であるが、フィンケルシュタイン(現在はテルアビブ大学)を始めとし、幅広い知識と方法論を駆使するバル・イラン大学。

なお、上記フィンケルシュタインの著書は以下の翻訳が日本語で手に入ります。

発掘された聖書―最新の考古学が明かす聖書の真実発掘された聖書―最新の考古学が明かす聖書の真実
イスラエル フィンケルシュタイン ニール・アシェル シルバーマン Israel Finkelstein

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