2011年12月19日月曜日

平成23年度日本語教育能力検定試験

この前10月に1ヶ月弱ほど帰国した折、特に切羽詰って必要だというのではないのですが、前から興味はあったので平成23年度日本語教育能力検定試験を受けてきました。
本日、幸いにして合格したとの報を実家より受けました。
ホームページ(http://www.jees.or.jp/jltct/result.htm)で確認しましたが、今年は合格者最多で、合格率も最大(26.6%)だったみたいですね。いい年に当たりました。
受験経験なし・独学でしたが、高い受験料を払って無事に合格できてひと安心です。
忘れないうちに実践的な面を記録しておこうと思います。

まず、今年度から試験傾向が変わりました。
過去問と比較する限り、公式声明通り出題範囲が変わったというよりも、「基礎項目」を定めることにより重点を置く部分が明確化されたという印象です。来年度試験がどう出るのかは分かりませんが、個人的には去年度までの方がマークシートで点を取りやすかったような気がしないでもありません。
今年度は、「日本語の構造」というコアの部分は当たり前として、言語教育法・実技というプラクティカルな面での出題が今までよりもかなり多くなったと感じました。
反面、暗記すれば点を取りやすい異文化接触、異文化理解、社会言語学、言語習得等は少なかったように感じます。時事的な、up-to-dateな話題は例年どおり出題されました。
今年の最低基準が何点で自分が何点かは分かりませんが(過去は振り返らない主義です)、手応えは結構ありました。

10月に試験を受けてからイスラエルに戻り、そこからセメスターが始まって忙しくなったのでもう遙か彼方昔のような感じがしますが、当日は実質試験時間に比べて待機時間や休憩時間が多く、8時間くらい大学の椅子に座ってた記憶があります。前日まともに寝れなかったので辛かったです。あと、例年通り若い男性は少なく、年齢層は高め。席は後ろから二番目でしたが、聴解の音声が聞こえにくいということは特にありませんでした。



これから勉強を始ようとする人がおられるかも知れませんので、個人的な経過も書いておこうと思います。

検定試験3つのセッションに別れ、1セッション:マークシート、2セッション:聴解、3セッション:マークシート及び記述となり、計4時間の長丁場、240点満点、うち聴解が40点、記述が20点です。

まず、独学で合格した上での感想ですが、ある程度戦略を練ってやるべきことをちゃんとすれば、早い人(つまり基礎学力があって勉強に慣れてる人)は一ヶ月程度の勉強期間でも合格可能だと思いました。

私自身は余裕を持って半年くらい前から始めましたが、それは使用した教材のためです。NAFL(http://shop.alc.co.jp/course/ld/)の教材を中古でまとめて入手したのですが、リンク先をご覧になればお分かりのとおり、24冊もあります。内容自体はコンパクトにまとまっており(失礼ながら執筆者によって出来不出来はもちろんありますが)、広く(浅く)出題範囲の9割くらいは完全にカバーすることができると思います。残り1割は上述した日本語教育に関する時事問題及びカバーしきれない問題──例えば危機言語に関する問題で「現在地球上の言語の大部分は消滅に向かってるが、その速度や如何?」という問題、この問題を出すのはどうかと思いますが、デイヴィッド・クリスタル『消滅する言語』に従って二週間に一言語という解答──です。

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私は教材自身が面白そうだったのと、検定合格は一つの目安で、そもそも言語学・日本語学・日本語教育学に興味があったので、この24冊を文字通り真面目に最初から最後まで読んだため、結構時間がかかりました。
ただ当たり前の話ですが、この24冊全てが等しい割合で出題されるはずもないので、検定合格が目標であればこの24冊全てに等しい時間をかける必要はなく、むしろ効率が悪いと言えます。

日本語文法、教授法、音声学が最重点のため、日本語文法・音声学は補助教材・問題集を追加してガンガンやった方が良いと思います。特に音声学・聴解は全くの初歩から始める場合原理をしっかり抑える必要があるので、ごまかしが効かないので必ず勉強する必要があります。

去年まではそれに加え、第二言語習得や中間言語、 異文化適応や異文化理解、学習心理学等の基礎的な問題が結構たくさん出題されてましたが、今年は例年に比べて出題が少なかった気がします。この分野も語句を覚えれば必ず点が取れるので落としたくないところですね。
日本語史は個人的に興味があるのですが残念ながらあまり出ません。例年日本語教育史、特に明治以降が結構細かいところまで出題されて驚いた覚えがありますが、今年はさっぱり出ませんでした。

あとは細かい問題が時事も含めて色々出ますが、事前学習で対処しようのないものも結構多いです。対照言語学も結構出るのですが、そもそも私のように韓国語や中国語が分からないと解きようのない問題もありますので、これは韓国語・中国語学習者用のボーナス問題と考えて諦める他ないかも知れません。他にも各国言語事情・言語政策も時々出ますが、有名どころ以外をしっかりカバーするのは大変だと思います。今年はなんかタイが多かったです。この辺りはどれだけ幅広い知識を持ってるかを測っているのでしょうか。一般言語学、言語類型論等は以前に増して問題数が減ってる印象を受けます(得意分野なので稼ぎどころなのですが…)。あまりに「広く浅く」しすぎた反省なのでしょうか、今年は「日本語教師能力検定試験」という原点に立ち戻って日本語学・日本語教育学に集中していこうという意気込みが見られた試験でした。

とりあえず、日本語学一般(文法)、教授法・実習、音声・聴解を最重要と考えて勉強して、過去問をひたすら解きながらそれ以外の分野の出題傾向を把握して勉強すれば、そんな滅茶苦茶に難しい試験でもないので、できる人なら一〜二ヶ月でも大丈夫だと思います。

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このシリーズが読み物としても面白かったので中古で何冊か集めて読んでました。

もし検定試験を来年受けようと思っている人がおられたら、頑張ってください。
現役の日本語教師の方、いつもお疲れ様です。

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