2011年11月20日日曜日

My Sweet Canary

ヘブライ大学の先生二人に薦められて、「My Sweet Canary」という映画を週末に観に行きました。実はエルサレムで映画を観るのは初めてです。
(公式ホームページはこちら:http://www.mysweetcanary.com/


この映画はRosa Eskenazy(19世紀末〜1980)という、セファラディー系(1492年にスペインから追放されたユダヤ人の子孫)女性歌手を巡るドキュメンタリー。三人のミュージシャンとともに、彼女の生まれ故郷イスタンブル、家庭の経済苦のために移り住んだサロニカ(テッサロニキ)、その後活動の中心となったアテネ、を、彼女の作曲した様々な曲の演奏を交つつ巡るロードムービー。

この人のことを不勉強故全く知らなかったのですが、かなり興味深いというかなんというか、激動の人生を生きた人だなあ、という感想です。
音楽的には、これまた不勉強でよく知らないのですが、ギリシャの大衆音楽で20世紀前半から大きな影響を持った「Rebetiko」というジャンルのディーヴァ的存在で、誰からも愛されていたそうです。

彼女はユダヤ人の家庭に生まれたのですが、ユダヤ人であるという意識は希薄だったらしく、10代後半でキリスト教徒の男性と恋に落ち、駆け落ちして結婚したようです。その数年後に乳飲み子を残し夫はこの世を去ってしまうのですが、彼女は女手ひとつで子どもを育てながら歌手として生きていくのは不可能だと判断、子どもを手放します。

その後音楽的な成功を求めアテネに移り、そこでミュージシャンとして大成します。
しかしながらそうこうするうちに1940年にはイタリアがギリシャに侵略、その翌年の1941年にはナチスドイツにより制圧されます。
当時恋仲だったドイツ人上級将校の協力もあり、彼女はそれでも演奏を続け、偽の洗礼証明書を手に入れ、1942年には彼女自身のナイトクラブまで作ります。また対ナチ活動としてパルチザンを匿い、ユダヤ人を助け、彼女の家族もアウシュヴィッツ行きの移送列車から救います。

しかしそれも長くは続かず、ついに正体がバレ、三ヶ月ほど投獄された後、恋糸のドイツ人高級将校、及びギリシャ空軍に所属していた実子の助けによって放免、その後地下に潜伏したまま第二次世界大戦の終結を待ちます。

戦後は30歳年下の男性と結婚したり、アメリカツアーを行ったりとしましたが、60年代は活動が沈静化。その後あらためて音楽活動に精を出しますが、最期は孤独のうちに死んでいったようです。

激動の20世紀を生きた、一人の女性の軌跡。

イスラエルで作られた映画の割にはユダヤ色・セファラディー色・ユダヤスペイン語色がそんなに強くありませんでしたが、興味深く観ました。音楽も良かったのでサントラも購入。
日本で観れるようになるかどうかは分かりませんが、もし機会があれば是非。ヤスミーン・レヴィも出てますよ。




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